USB PD(Power Delivery-パワーデリバリー)とは?
USB PD(Power delivery-パワーデリバリー)とは何か、詳しく解説しております。PD規格USB PD3.0や、 最新のPD規格、USB PD3.1など、昨今のUSB事情を含め、機能的な解説と基本情報をご案内しています。
テクノフロンティア2018にてUSB PD製品を発表以降、USB PD(パワーデリバリー)って何ですか? とのご質問を多数頂戴致しましたので、本ページにて解説を致します。マルチに充電できるこの機器は、接続機器に合わせて電力を自動調節してくれるので、大変便利です。
前回のテクノフロンティアでは、当社の新商品、USB PD(パワーデリバリー)を2種類、展示致しました。来場者の方々からは大変良い反応をいただき、誠に感謝しております。昨今頂くお客様のご要望により、ユニファイブでは40W品および60W品のUSB PD製品を2機種開発、その後もラインアップを広げており、65W品もリリースをしております。
USB PD(Power delivery-パワーデリバリー)とは?
USB PD、データ転送と高出力電源供給を実現する次世代USBの魅力
USB PD(USB Power Delivery)は、データ転送と高出力電源供給を1本のケーブルで実現するUSBの新技術です。従来のUSBから進化したUSB PD対応のACアダプターは、USB Type-Cケーブルを介して電力とデータを同時に供給できるため、USBの性能を最大限に活かします。この技術により、従来のUSB充電方式に比べて大幅に高い電力を供給できるようになり、スマートフォンやタブレットだけでなく、ノートパソコンといった高電力を必要とする大型デバイスの充電にも対応可能です。
以下USB PDの機能を簡単に纏めます。
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従来のUSB1.1(2.5W),USB3.0(4.5W),USB-BC1.2(7.5W)に比べて、USB-PDでは100Wまで電力の供給が可能。
- 電力の供給側、受給側といった固定を無くし、給電と受電を入れ替えることが可能(ロール・スワップ)。例を挙げると、PCから外付けバッテリーを充電していたが、ロールスワップ機能により外付けバッテリーからPCを充電することが可能に。(Type-Cケーブルの場合)
- 複数の外部デバイスにおける電源の最適化が可能。
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接続機器に合わせて電力を自動調整。
昨今のUSB事情
昨今では車内はもちろん、公共のバスや飛行機内にまで、あらゆる場所でUSBポートをみかけます。また、パソコンのUSBポートからも電源を得ることも、日常になっていますね。まさしくUSBは、スマホなどの小型機器にとってユビキタス的な充電タップです。
その様な従来のUSBポートは、USBドライバーを用いてのデータ転送を主な目的として使われましたが、ユーザーは次第にデータ通信のみでなく、充電等の電源の供給源として使用する様に次第に移り変わっていきました。
USB PD3.0で安心のUSB PDを
USB-IF(Implementers Forum)という、USBの規格策定団体が策定した最新の規格USB-PD3.0は、粗悪品のケーブルや、市場に出回っている規格に満たない製品を取り除き、USB-PDが安心に利用できるようにする事を目的とした規格です。
USB-PD3.0は2.0に比べ、ロールスワップが高速化されており、万が一電源の供給が止まる事象が発生した場合でも、データの破損のリスクが減ります。
また、C-AUTH=USB Type-C Authenticationと呼ばれる機器間での相互認証機能も追加され、接続機器またはケーブルが信頼できる製品か否かを機器間でチェックし、問題がある場合には機能にブロックが掛けられるようになっています。
USB PD 3.1:最大240W給電の進化
昨今の市場では、上記で解説したUSB PD3.0が主流となっておりますが、USB-IF(Implementers Forum)は2021年5月26日に、USB Power Delivery(USB PD)Revision 3.1の新たな仕様を発表しました。
これは、USB Type-C®ケーブルおよびコネクターを介して最大240Wの電力を供給できるようにするためのメジャーアップデートとなります。上記で解説した通り、これまでのUSB PDは、定格5AのUSB Type-Cケーブルを用いた20Vのソリューションで、100Wに制限されていました。
それに合わせてUSB Type-Cの仕様もリリース2.1で更新され、240Wのケーブル要件が定義されました。また、USB PDのプロトコルと電源の定義も更新されたため、100Wでは十分ではなかった多くのデバイスにUSB PDの適用が可能になりました。
新しいUSB PDアーキテクチャーでは、大幅に厳格なパワーネゴシエーションプロトコルが定義されており、この高い電力供給能力へのアクセスと使用が安全に行えるようになっています。なお、100〜240Wの電力を使用する製品の安全要件は、低消費電力の製品よりも厳しく、製品が販売される各国の規制に基づいて適用される安全仕様により定められます。
USB Power Delivery 3.1の新機能により、大型のノートパソコンなどの大電力製品が、従来の電源コネクターからUSB Type-Cに移行できるようになるでしょう。
新たに3種類の固定電圧を選択可能に、EPR(拡張電力範囲)で高出力化を実現
USB PD 3.1の仕様の主な特徴としては、新たに3種類の固定電圧を選択可能になったことがまず挙げられます。従来のSPR PDO、SPR APDOのスペックである5V、9V、15V、20Vに加え、新たに28V(100W以上)、36V(140W以上)、48V(240W以上)の固定電圧を選択可能となりました。 USB PD 3.1の主要な新機能である**EPR(Extended Power Range)**により、20Vを超える電圧での電力供給が可能になりました。 EPRでは、28V、36V、48Vの固定電圧が追加され、それぞれ100W、140W、180Wを超える電力供給に対応します。
EPRモード:高出力電力供給を実現する安全プロトコルの仕組み
EPRモードは、高出力の電力を安全に供給するための通信プロトコルです。 ソース(電源側)とシンク(デバイス側)は、EPRモードに入る前に、互いの機能を確認し、安全な電力供給のための合意を形成します。
下記に、USB3.1が登場するまでの経緯と各種スペックをわかりやすく表にまとめました。
発表年 | 2010年 | 2012年 | 2014年 | 2015年 | 2017年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|---|---|
USB規格 |
BC1.2 |
PD1.0 | PD2.0 | PD3.0 | PD3.0PPS | PD3.1 |
USBコネクタ | Type-A |
Type-A, Type-B |
Type-C | Type-C | Type-C | Type-C |
出力 | 5V/1.5A |
N/A |
5V/3A 9V/3A 15V/3A 20V/2.25A 20V/3A 20V/5A |
5V/3A 9V/3A 15V/3A 20V/2.25A 20V/3A 20V/5A |
5V/3A 9V/3A 15V/3A 20V/2.25A 20V/3A 20V/5A PPS: 3.3V-5.9V 3A, 3.3-11V ЗА, 3.3-16/ ЗА, 3.3-21/ 3А, 3.3-21V 5 |
5V/3A 9V/3A 15V/3A 20V/3A 20V/5A EPR: 28V/5A 36V/5A 48V/5A AVS: 15-28V/5A 15-36V/5A 15-48V/5A |
USB PDで実現する最速・最適な充電体験
単に高出力な電力供給を実現するだけではありません。USB Type-CにはCC (Configuration Channel)という専用の信号ラインが備わっており、USB Power Delivery対応の機器を接続すると、デバイスに最適な電力を自動検知し、迅速な充電が開始される仕組みとなっています。
Type-Cケーブルの進化:EPR対応で安全性向上
USB PD 3.1の拡張に伴い、USB Type-Cケーブルの仕様もバージョン2.1に更新されました。 EPR対応ケーブルは、E-Markerと呼ばれるチップを搭載し、50V・5Aに対応していることを示します。 これにより、高出力給電時の安全性と信頼性が向上します。
GaN技術との組み合わせで高効率・小型化
GaN(窒化ガリウム)は、次世代の半導体材料として注目されています。 GaNを用いたパワーデバイスは、従来のシリコン製パワーデバイスに比べて、電力損失が少なく、スイッチング速度が速いという特徴があります。 USB PD 3.1の電源にGaN技術を採用することで、高効率化と小型化を両立できます。
時系列に沿ったUSB PDの歴史
上記までは、USB PDとは何か、最新のUSB PD3.1とは?という部分にフォーカスいたしましたが、ここでは時系列に沿ったUSB PDの歴史を振り返り、これまでの技術の進化の理解を深めたいと思います。
USB PD以前:低電力充電と規格の乱立(1996年~2012年)
- 1996年: USB 1.0が登場。当初はデータ転送が主目的でしたが、周辺機器への給電も可能でした。しかし、供給電力は5V・100mAと非常に低く、充電用途には不向きでした。
- 2000年: USB 2.0が登場。データ転送速度が大幅に向上しただけでなく、供給電力が5V・500mAに向上し、携帯電話などの充電にも利用されるようになりました。
- 2007年: バッテリー充電規格USB BC (Battery Charging) 1.1が登場。電圧は5Vに固定されましたが、最大1.5Aの電流供給が可能になり、7.5Wまでの給電が可能になりました。
- 2010年: USB BC 1.2が登場。充電動作の仕様がより強固なものとなりました。
- この時期、USB充電は普及し始めましたが、依然として電力不足や規格の乱立という問題がありました。ノートパソコンなど、より多くの電力を必要とするデバイスには、USB充電では対応できませんでした。
USB PDの誕生と進化:高出力・双方向給電の時代へ(2012年~2021年)
- 2012年: USB PD 1.0が登場。最大100W(20V・5A)の電力供給が可能になり、ノートパソコンなどの大型デバイスの充電にも対応できるようになりました。
- USB PD 1.0では、電力供給能力を5つの標準的な「プロファイル」で定義していました。また、USB PD 1.0では、ホストとデバイス間で電圧と電流のネゴシエーション(交渉)を行うことで、安全な電力供給を実現しました。しかし、既存のUSBコネクタは常に5Vの電圧がかかっていたため、双方向の電力供給は実現できませんでした。
- 2014年: USB PD 2.0が登場。プロファイル方式からPDO(Power Data Object)方式に移行し、より柔軟な電力供給が可能になりました。また、USB Type-Cコネクタが登場し、USB PDの進化を加速させました。Type-Cコネクタは小型で、上下対称のデザインを採用しており、表裏を気にせず挿し込むことができます。
- 2015年: USB PD 3.0が登場。PPS (プログラマブル電力供給) 機能が追加され、電圧を20mV単位で細かく調整できるようになり、充電効率が大幅に向上しました。また、PPSにより、リチウムイオン電池などの充電を最適化できるようになりました。USB PD 3.0では、機器認証の規定が盛り込まれ、安全性が向上しました。
USB PD 3.1とGaN技術:さらなる高出力化と高効率化へ(2021年~)
- 2021年: USB PD 3.1が登場。EPR (Extended Power Range) が導入され、最大240W(48V・5A)の電力供給が可能になりました。また、GaN(窒化ガリウム)技術の進歩により、USB PD電源の高効率化と小型化が進んでいます。EPC9195のようなGaN技術を用いたリファレンスデザインが登場し、USB PD 3.1の性能を最大限に引き出すことが可能になりました。
USB PDの未来:あらゆるデバイスへの給電
USB PDは、ノートパソコン、スマートフォン、タブレットなどのモバイルデバイスだけでなく、家電製品や産業機器など、さまざまな分野での活用が期待されています。 USB PD 3.1とGaN技術の進化により、将来的には、あらゆるデバイスがUSB Type-Cケーブルで充電される時代が来るかもしれません。
ユニファイブでは、最新のPDソリューションにGaNを用いた次世代小型ACアダプターを数多くラインアップしております。
小ロットからのカスタムにも対応しており、柔軟なご提案を行なっております。サンプルやその他のお問い合わせがございましたら、当社営業までお気軽にお声がけをお願い申し上げます。
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