DoEレベルVII(7): 米国エネルギー効率の新たな基準について
米国エネルギー省(DoE)の電源変換効率に関する規制は、エネルギー消費を抑制し、環境への負荷を軽減するために長年施行されてきました。現状はレベルⅥですが、今後「レベルVII」基準新たに導入が予定されております。
DoEレベルがⅥからⅦへ移行予定
米国エネルギー省のDOE(Department of Energy)は、効率規制を現行のレベルVIから、さらに厳格なレベルVIIへの移行を計画しています。
そもそもの効率規制の始まりは、2007年のエネルギー独立安全保障法(EISA)が、外部電源(EPS)に対する省エネ基準の基礎を築いたところから始まり、最新版の現行効率基準はDoEレベルⅥとして2014年に発表されました。その10年前に比べると、シリコンカーバイドや窒化ガリウム(GaN)のような広帯域ギャップ技術の進歩により、より高効率の外部電源の生産が可能になり、また、市場にもそれらの技術を使った製品が浸透していることもあり、それに合わせて効率基準を格上げをしようという動きが背景となります。
DoEレベルⅥとレベルⅦの主な違い5選
1:効率規制の適用範囲の拡大
レベルVIIは、EPS(外部電源)の適用範囲を拡大しています。レベルVI基準がクラスAの直列動作EPSに限定されていたのに対し、レベルVIIはクラスAおよび非クラスAのEPSを含む、直列・間接動作を問わない統一基準に変更されています。これにより規制適用がシンプルになります。
クラスA 外部電源 | 非クラスA外部電源 | |
---|---|---|
直列動作EPS | レベルⅥ | レベルⅥ |
間接動作EPS | レベルⅣ | No-standards |
2:マーキングとコンプライアンスプロトコルの違い
DoEレベルVI基準では、EPSにローマ数字「VI」を付けた効率表示マークが必要でしたが、レベルVIIではこのプロトコルが更新され、最新のレベルVII基準に適合していることが明示されるように新しいマーキングが導入されます。
3:効率要件
DoEレベルVIIは、稼働時での効率と無負荷時の電力消費をより厳しく制限し、エネルギー消費の削減を促進するように設計されています。
(単一出力AC-DCアダプター 基本的な電圧)
定格出力電力 | 最小平均効率 | 無負荷時最大消費電力 |
---|---|---|
1W以下 | 0.5×Pout + 0.169 | 0.075W以下 |
1W超~49W以下 | 0.071×ln(Pout) - 0.00115×Pout + 0.67 | 0.075W以下 |
49W超~250W以下 | 89.0% | 0.150W以下 |
250W超 | 89.0% | 0.150W以下 |
(単一出力AC-DCアダプター 低い電圧)
定格出力電力 | 最小平均効率 | 無負荷時最大消費電力 |
---|---|---|
1W以下 | 0.517×Pout + 0.091 | 0.075W以下 |
1W超~49W以下 | 0.0834×ln(Pout) - 0.0011×Pout + 0.609 | 0.075W以下 |
49W超~250W以下 | 88.0% | 0.150W以下 |
250W超 | 88.0% | 0.150W以下 |
(多出力電源)
定格出力電力 | 最小平均効率 | 無負荷時最大消費電力 |
---|---|---|
1W以下 | 0.497×Pout + 0.067 | 0.075W以下 |
1W超~49W以下 | 0.0782×ln(Pout) - 0.0013×Pout + 0.643 | 0.075W以下 |
49W超~250W以下 | 88.5% | 0.150W以下 |
250W超 | 88.5% | 0.150W以下 |
注:
- Poutは定格出力電力(W)を表します。
- 効率は小数で表示(例:88.0%=0.880)
- 基本電圧:出力電圧6V以上
- 低電圧:出力電圧6V未満
5:適応型EPSへの考慮
USB-CやPD電源などの適応型EPS(異なる出力電圧に対応可能な電源)に対して、設計上の負担を減らしつつ効率を向上させるため、異なる効率制限の設定が議論されています。特に低電圧出力(3.3Vや5V)の場合、効率に関する柔軟な基準が検討されています。
DoEレベルⅦの導入に伴うメリットについて
1:最終消費者の運用コスト削減
年間で約4,730万ドルの運用コスト削減が見込まれています。7%の割引率で見積もった場合でも、年間で約4,270万ドルの節約が可能と言われています。
2:気候関連のメリット
年間で約1,150万ドルの温室効果ガス削減効果が見込まれており、気候変動への寄与が期待されています。この評価は、二酸化炭素削減などの社会的コストを3%の割引率で計算したものです。
3:健康上のメリット
SO₂やNOₓなどの有害物質排出量の削減により、健康への年間貢献額が約1,670万ドルから2,040万ドルと見積もられています。特にPM2.5の前駆体となる物質の削減が健康に寄与すると言われております。
これらの数値から、レベルVII基準の採用は経済的、環境的、健康面において多大なメリットが期待されています。
新基準の最終的な公表と、準備期間について
レベルVII基準の最終規則は2024年後半に公表される予定です。公表後、従来のエネルギー保存規制と同様に、遵守のための2年間の準備期間が与えられるとのことです。ユニファイブでは、すでにDoEレベルⅦ基準のドラフトに対応した製品をラインアップしております。
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